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Japanese(日本語) Funded by LTI Korea

仕事の喜びと哀しみ

Author
チャン·リュジン
Co-Author
-
Translator
牧野 美加
Publisher
CUON
Published Year
2020
Country
JAPAN
Classification

KDC구분 > literature > Korean Literature > Complete Collection > Library > Complete Collection (individual)

KDC구분 > literature > Korean Literature > Korean Fiction > 21st century > Short Story

Original Title
일의 기쁨과 슬픔
Original Language

Korean(한국어)

Romanization of Original
Il ui gippeum gwa seulpeum
ISBN
9784910214153
Page
268
Volume
-
Jang Ryujin
  • JANG RYUJIN
  • Birth : 1986 ~ -
  • Occupation : Novelist
  • First Name : Ryujin
  • Family Name : Jang
  • Korean Name : 장류진
  • ISNI : -
  • Works : 9
No. Call No. Location Status Due Date Reservation
1 일본어 813 장류진 일-목 LTI Korea Library Not Available - -
Descriptions
  • Japanese(日本語)

【創批新人小説賞(2018年)】韓国の板橋テクノバレーで働く人々の日常をリアルに描いた表題作など、働くことを通じて直面するさまざまな感情や人との関係性を生き生きと描写した...

Source: https://honto.jp/netstore/pd-book_30711006.html

Book Reviews1

  • Japanese(日本語)
    『仕事の喜びと哀しみ』 愛すべき何気ない日常
    人生は自身の小さな選択の積み重ねであり、自分以外の存在との小さな駆け引きの連続である。幾何学模様の表紙は、そんな複雑な組み合わせを表現しているのだろうか。この本に詰まっているのは、さまざまな人生から切り取ったワンシーン。ひとつひとつの物語はどれも、いつか自分が経験したことだったかのような錯覚を起こさせる。 私たちが他人に感じるイライラの、その裏に隠れた本当の感情に気付かされる「幸せになります」、落とせない女はいないとばかりに自信満々の男心を匠に描いた「俺の福岡ガイド」、ネット社会のチャンスとその儚さを皮肉る「やや低い」……嫉妬、羨望、後悔、執着、ためらい。人間の持つ色とりどりの感情が絶妙な表現で描かれ、どこか憎みきれない登場人物たちに惹きつけられていく。時に旅行の同行者として、時にSNSにイイネを押す参加者として目の前ですべてを見ているような臨場感。8編それぞれが個性的で飽きる暇がない。 こんな経験はないだろうか。美容室で「お湯の温度は大丈夫ですか?」と聞かれ、本当は少し冷たいのに「大丈夫です」と言ってしまうとか、詳しく説明を聞いてしまったからと断れず、気に入ってもいない商品を購入してしまう。覚えのある人ならば、必ず共感できるのが5番目に収録されている「助けの手」だ。依頼した家政婦に対して気付いた違和感が段々と大きくなるのにもかかわらず、はっきりとは伝えられず、自分をどうにか納得させて我慢してしまう主人公。共働きで頑張る自分を労わるために、マイホームを快適にするためにと依頼した家事代行サービスが、かえって余計なストレスをもたらし、家の居心地まで悪くする。相手に主導権を取られ、事態は思わぬ方向に転がっていく。そこに見えるのは自分の人生でありながら、他人の意見や世間体に神経をすり減らし、本当の意味で自分を大切にすることのできない私たち自身の姿だ。人間の心理を把握しきった最後のオチには唸ってしまうこと間違いない。 表題作の「仕事の喜びと哀しみ」は、会社での「あるある」場面からスタートする。手短に済ますことを目的としたはずの立ったままの朝礼。しかし、それは話の長い上司のせいで30分以上も続き、毎日の業務時間を圧迫する。ベンチャー企業として効率化や自由な社風を謡いながらも、社員にとっては面倒でしかない残念な現状。主人公のアンナは、代表や同僚に小さな不満を抱えながらも、日々自分に与えられた業務をこなす等身大の若者だ。会社とそこで働く人の間にはいつも微妙なズレが存在し、だからこそ会社と呼ぶのかもしれないと考えさせられる。 「それでもいつもと変わらず夜は明け、自分は今もこの世の中に存在し、出勤もしなければならないという事実と向き合わねばならなかった。」 仕事は時として自分を守る盾にも、突き刺す槍にもなる。深く傷つき、絶望感に打ちのめされた次の日でさえ、朝が来れば、私たちの体と心は仕事へと向かう。また立ち上がれるのはなぜだろうか。 そのヒントは「著者あとがき」にあった。著者のチャン・リュジン自身も会社で働く女性だった。会社員として働きながら作品を発表していたが、小説を書いていることは長年の秘密だったようだ。その抱えた大切な秘密が会社でのストレスを癒し、逆に筆が進まない時は会社の仕事に熱中することで慰められたりもしたという。著者のような大きな秘密でなくても、大切な何かが私たちを仕事に向かわせてくれているのかもしれない。仕事中に飲むたった1杯のインスタントコーヒーや疲れ果てた体で家に帰って飲む発泡酒のように自分で意識しないくらい当たり前の何か、それらは仕事があるからこそ味わえる小さな「喜び」なのだろう。 フェミニズムやクィアなど社会的メッセージの強い韓国文学に躊躇している人も多いのではないだろうか。是非「仕事の喜びと哀しみ」を韓国文学の入り口として読んで欲しい。この本の中にも、雇用問題や男女差別と言った社会問題がところどころに散りばめられ、今日の韓国を垣間見せる。しかし、軽快なテンポで進むストーリーは決して読者の心を曇らせはしない。隣の国でも私たちと同じような日常が営まれ、悩みを抱えながらも生きている人々がいることに目を向けて欲しい。ニュースで取り上げられる歴史や政治だけでない、そこに息づく普通の人の暮らしに親近感を持つはずだ。 どの作品も結末はみな、心温まるハッピーエンドでも涙溢れる悲劇でもない。物語は主人公たちの日常に戻っていく。そして私たちに気付かせてくれる。代り映えのない毎日も、他の誰かから見たら興味深いドラマであり、私たちは、それぞれがドラマの主役なのだと。天気の良い日に青空を見上げるような爽快感がありながらも、何度も読み返したくなる強烈なクセを残す。楽しみを制限され、不便な日常を過ごす中でも少しだけ前を向いていこう、とそっと手を差し伸べてくれる一冊である
    2022-09-13 16:50
    by 高橋 惠美