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岡崎 武志・評『第九の波』『「線」の思考』ほか
/November 24, 2020◆『第九の波』チェ・ウンミ/著(書肆侃侃房/税別1900円) 「韓国女性文学シリーズ」の8冊目。若手文学賞を次々と受賞し注目されるチェ・ウンミ初の長編が『第九の波』(橋本智保訳)だ。 かつて石灰鉱山で栄え、いまは原発誘致問題の賛成、反対で二分される海辺の街・陟州(チョクチュ)が舞台。ヒロインのソン・イナは保健所に勤務する薬剤師だが、18年前にセメント工場の次長をしていた父が謎の自殺を遂げ、一家で街を離れ、彼女は舞い戻ってきていた。 -
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10月 私のおすすめ 山本昭宏(神戸市外大准教授)
/October 28, 20201)星野智幸『だまされ屋さん』(中央公論新社) (2)チョ・ナムジュ著、小山内園子・すんみ訳『彼女の名前は』(筑摩書房) (3)中央公論特別編集『彼女たちの三島由紀夫』(中央公論新社) -
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武田 砂鉄・評『ウジョとソナ』パク・ゴヌン/著
/August 4, 2020◆『ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記』パク・ゴヌン/著 神谷丹路/訳(里山社/税別2600円) 歴史を作るのは国ではなく、人間の営みである。1938年から46年まで、大韓民国臨時政府の独立運動家として中国へ渡った夫婦が、日本軍の侵攻から逃げながら、娘への愛情を注ぎ続けた。夫婦が実際に残した日記を孫娘が編纂(へんさん)し、それをグラフィックノベル化したのが本書である。 -
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人生歌う、海女の呼吸 ホ・ヨンソンさん詩集刊行
苦難の歴史を背負いつつ強く生き抜く韓国・済州島の海女たち。一人一人の声に耳を傾け、記憶を紡ぐホ・ヨンソンさんの詩集『海女たち』(姜信子さん、趙倫子さん訳)が新泉社から刊行された。 -
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6月 私のおすすめ 小川公代(英文学者)
(1)多和田葉子『星に仄(ほの)めかされて』(講談社) (2)オスカー・ワイルド著、富士川義之訳『童話集 幸福な王子他八篇』(岩波文庫) (3)『小説版 韓国・フェミニズム・日本』(河出書房新社) -
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ファン・ジョンウンさん 社会を生きて、書く 韓国で注目を集める小説家
韓国の作家、ファン・ジョンウンさんの短編集『誰でもない』(晶文社)と長編『野蛮なアリスさん』(河出書房新社)の2作が立て続けに邦訳された。同国で今、最も注目されている作家の一人。すでに多くの文学賞を受賞し、他の作家からの評価も高い。4月の来日を機に、作品に込めた思いや小説観などを聞いた。 「登場人物の声が聞こえないと、小説を書き始められません。この人物なら、どんな言葉、音声でどういうふうに語るかを常に考えています」 韓国で2013年に刊行された『野蛮なアリスさん』は、まさに「語り」に特長があるセンセーショナルな作品だ。