-
Title: 私の生のアリバイ
Author: コン・ソンオク
Genre: 小説
LTI Korea staff: 李善行(イ・ソネン)soyi@klti.or.kr / +82-2-6919-7731
-
About the book
『私の生のアリバイ』は表題作をはじめ、「母」「酒を飲みたばこを吸う母」「母情の影」など11編の作品からなる短編集。全体を貫いているのは、韓国社会において疎外された人々の姿、なかでも社会に根強くはびこっている「女性の生きづらさ」についてだ。韓国には古くから女性に対して過度な女性性や母性を求めるという風潮がある。それは、女性はか弱く繊細なもの、男性に依存し、母性愛があってこそ正常だという考えによるもので、韓国社会に染みついた家父長制から派生している。『私の生のアリバイ』は、まさに、このように型にはめられた女性像に対して、様々な問題を提起し、女性たちの切実な心情を描いている作品群だ。収録された作品の一部は、子供を児童一時保護所にあずけざるを得なかった著者自身の辛い経験がもとになっている。
About the author
孔善玉(コン・ソンオク)1963年全羅南道生まれ。1991年、著名な文学季刊紙『創作と批評』秋号に中編「種火」を発表し、作家活動をスタートした。小説集に『私の生のアリバイ』『花のような時代』など、散文集に『れんげ畑で私は泣いた』『コン・ソンオク、40歳』など多数。韓国の権威ある文学賞である申東曄(シン・ドンヨプ)創作賞、今日の若き芸術家賞、今年の芸術賞、萬海(マンヘ)文学賞などを受賞している。
「近代に生まれたが、前近代的な人生を生きてきた」と自身を語る。借金に追われる父、病弱な母の看護が子供の頃から作家コン・ソンオクに与えられた生きるため生の条件だった。大学に入学はしたものの偽装就業者(韓国では1970年代末から多くの大学生たちが自分の履歴を隠して九老工団の労働現場に身を投じ、労働者の組織化や待遇改善闘争に乗り出した)ではなく、あくまで生計のために働く元大学生就業者として働いた。その後、バスの案内嬢として転々としていたある日、自らの貧しかった時代が作品にしようと思いたち、作品を書き始める。韓国社会において疎外された人々と貧困の問題と女性のねばり強さを生き生きとした言葉で描き出している。About the translators
姜芳華(カン・バンファ)岡山県に在日三世として生まれる。岡山商科大学法経学部法律学科卒業後に渡韓。延世大学韓国語学堂卒業後、梨花女子大学通訳翻訳大学院韓日翻訳学科(修士号)、高麗大学文芸創作学科小説専攻(博士課程修了)。現在梨花女子大学通訳翻訳大学院翻訳学科講師、漢陽女子大学日本語通翻訳家講師、韓国コンテンツ振興院審査員、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー翻訳家、フリーランス翻訳家。韓国文学翻訳院文学翻訳新人賞受賞(2009)。映画シナリオ・字幕翻訳、児童書翻訳、資料翻訳、翻訳監修など多数。共著に『日本語翻訳スキル』(nexus japanese、2011)。
Media Response/Awards Received
「ぶっきらぼうだが意表を突く文体、傷だらけの人生を正面から受け止めるテーマ意識。彼女の小説を読むといつしか涙が頬をつたい、人生に対して謙虚になる。」 -京郷新聞
「強烈で圧倒的な状況設定と人生のどん底まで下りていく熾烈さは、コン・ソンオクの小説に一貫した特徴だ。そこへモチーフの多彩な変化が加わり成熟さを増した作品が、読者の信頼に応えてくれる。」-ハンギョレ新聞